View across the water of mountains in the distance in Misty Fjords, Alaska

グレイシャー・ベイの野生動物

グレイシャー・ベイ国立公園の手つかずの大地と海の景色には、何百種類もの生物が何にも邪魔されることなく生活しています。

ガラスのように透明なフィヨルドの海から、ザトウクジラが呼吸するために顔を出します。霧の柱が水上に立ちのぼり、ベイのあちこちで低い轟音のようなクジラの呼吸がこだまします。近くにはラッコたちが浮かんでいます。遠くの海岸ではヒグマが砂浜沿いを歩き回り、巨大な前足で岩をひっくり返しては食べ物を探しています。これらは、グレイシャー・ベイ国立公園を訪れる人が出会う音や風景です。自然のままの状態で、何の制限もなく自由に動き回る、野生動物の最高の姿を観察できる世界屈指のスポットなのです。

グレイシャー・ベイ国立公園の入口は、海底深くから上昇してくる強い海流や急流のため、海洋生物の格好の餌場になっています。愛嬌のあるトドはこの栄養豊富な海域に生息し、数十メートルも深く潜ってニシン、サバ、タコ、イカを捕まえます。満潮時にはザトウクジラもこの人気スポットにやって来て、オキアミの大群を一飲みにして特大サイズの食欲を満たします。

水面をかすめるように飛び、急降下して渦や波間に飛び込む多くの種類の鳥も見られます。ミツユビカモメ、ハクトウワシ、ウミガラスなどがよく観察されるほか、ハチドリが見られることもあります。この地域で最も象徴的なのが、ツノメドリとエトピリカです。通常これらの海鳥は開水域を好み、このような保護海域には滅多に姿を見せないものですが、豊富な餌に引きつけられているようです。この鳥を見つけるのは簡単です。明るい色のくちばし、丸い体、そして特に離着陸時に露わになる下手な飛び方に注目しましょう。

より保護されたベイ入口付近は、数が増えているラッコの比較的新しい生息域になっています。1995年にベイで初めて目撃されたラッコの数は現在8,000以上と推測されています。ラッコはウニを餌にします。ウニが増えすぎると、この海域のシステムを支える昆布の森が過度に摂食されてしまうため、ラッコがベイ入口に戻ってくることは、健全な海洋環境の証です。ラッコはお腹を上にして休んでいる姿がよく見かけられます。波間に漂うふわふわの頭や後ろ足のヒレに注目しましょう。

ラッコにまったく出会えない場合は、シャチの特徴的な背ビレを探してみてください。回遊中のシャチは海洋システムのオオカミのようなもので、ラッコやアザラシに加え、アシカも餌にします。これらの小さな海洋哺乳類の数が増えるにつれ、ベイ入口の海域はシャチにとって絶好の餌場になっています。

ベイを進むにつれフィヨルドの幅は狭まり、海岸線が間近に迫ってきます。陸地に生息する公園の野生動物を観察する絶好のチャンスです。グルーミーノブでは、シロイワヤギが海岸線沿いの絶壁の崖で、デコボコの足場を渡っていく姿を探してみましょう。

氷河に近づき、海岸沿いの植物がまだらになって、海辺の視界が開けたら、海岸沿いにクマを観察できるチャンスです。公園内ではツキノワグマとヒグマが見られますが、ベイ奥部の遠方の海岸沿いがヒグマのお気に入りの餌場です。現在の推計では、300頭以上のヒグマが公園内を徘徊しています。

子育て中の母グマを除き、海辺にいる大人のヒグマは通常は単独行動をします。しかし、どんなクマも干潮時には海辺に向かい、アサリや海草などのシーフードで栄養を補います。

遠くの砂浜では、この公園でも滅多に姿を見せない海岸沿いのハイイロオオカミを見るチャンスがあるかもしれません。公園内には複数のオオカミの群れがおり、広大な見晴らしのベイ奥部は探すのに絶好のスポットです。

浜辺のクマ、流れる氷山に佇むワシ、遠くの海岸沿いで潮を吹くクジラなど、もちろん、日によって何が見られるかはさまざまですが、どれもグレイシャー・ベイ国立公園だからこそ出会える象徴的な風景です。クマが歩き回ったり、ハクトウワシが舞い上がったり、クジラが遠くの海岸沿いを悠々と泳いだりできるだけの広大な自然がこの公園にはあります。