The Queens Room Musicians with vocalist Rebecca Southard
Andrew Duff

Andrew Duff

Cunard writer

クイーンズ・ルームでの夕べ

 

クイーン・アンのクイーンズ・ルームは、ただ今夕暮れどき。部屋の端にあるバーから放たれた金色の照明はジュエリーを輝かせ、200人のお客様を温かく照らします。隠れたプロジェクターが映し出すアールデコ調の模様は、万華鏡のようにダンスフロアを彩ります。誰もいないステージの後ろのスクリーンはゆらゆらと揺れ、光と影がまだら模様を描きます。

 

さざ波のように流れる人々の話し声。トレーを手に、テーブルの間を縫うように移動するスタッフ。背景に流れるパイプ音楽。

 

午後8時45分の少し前、バンドのメンバーが所定の位置につきます。興奮がさざ波のように部屋中に広がり、期待が高まるのを肌にひしひしと感じます。今日はクイーン・アンのネーミング・クルーズの5日目。これから何が始まるかは、もう想像できます。

 

マイクを持ち上げるボーカリスト。温かい歓迎のあいさつ、ちょっとしたおしゃべり、そして一瞬の沈黙。ギタリストがシンプルなリフを奏でます。

 

ボーカリストが歌い始めると、時間が止まります。

 

話し声は消え、ドリンクを持つ手が止まり、忙しく働くスタッフさえもステージから流れる歌声に一瞬足を止めます。しばらくの間、彼女は部屋のムードを支配し、お客様は一人残らずその軽快なメロディに酔いしれます…

 

…そして、ベーシストが心地よいリズムを奏で始め、ドラマーが加わり、ピアニスト、ホーンセクションが続きます。人々が立ち上がり始め、歌がクライマックスに向かって盛り上がるにつれ、ダンスフロアはくるくると回るカップルやシングルのお客様でいっぱいになります。ボーカリストの歌声は凧のように舞い上がって室内を満たし、お客様に一緒に歌うよう促します。

 

魔法のような4分間が終わると、ドラムのクレッシェンドに続いてシンバルの音が鳴り響き、お客様はバンドやボーカリスト、そしてお互いに対して大歓声を送ります。お客様が一息つき、ワインで口を潤すと、まもなくバンドが次の曲を演奏し始めます。

 

その後数晩にわたり、社交ダンス音楽から80年代ポップスまで、バンドとボーカリストがさまざまなジャンルから実に幅広いレパートリーの音楽を演奏するのを聴きました。私は専門家ではありませんが、彼女がいかに才能あるボーカリストか、彼女に出演依頼をしたキュナードがいかに幸運であるかに気づきました。

 

ロイヤル・コート・シアターでトリを務めるウエスト・エンドおよびブロードウェイのスター、レイチェル・タッカーはある晩、私の意見が正しかったことを証明してくれました。

 

彼女は反論の余地のない口調で、私にこう言いました。「あの子は世界クラスよ。」

Rebecca Southard on stage in the Queens Room
Rebecca Southard on stage in the Queens Room
Rebecca Southard on stage in the Queens Room
Rebecca Southard on stage in the Queens Room

簡単な質疑応答

 

クイーンズ・ルームでのうっとりするような夜から数週間後、私はあの歌声の持ち主、レベッカ・ササードに会うためにクイーン・アンに再乗船しました。幸運にも乗船できたすべての人にとって特別な2週間となった命名式のクルーズを懐かしんだ後、キュナードの熱狂的なインスタグラム・フォロワーから寄せられた質問に答えてもらいました。

 

演奏やリハーサルをしていない時、船上でどんなことをするのが好きですか。

 

レベッカ:下のデッキにスタッフ用の食堂があり、そこは友達と過ごしたりおしゃべりしたりするのにうってつけの場所です。また、デッキ5前方のクルーエリアはとてもきれいで、船全体の中で大好きなスペースの1つです。晴れた日には本を持って行き、新鮮な空気を吸いながらリラックスします。

 

クイーン・アンでパフォーマンスするのはどんな気持ちでしょうか。

 

レベッカ:楽しいの一言につきます。船上で出会った才能あふれるミュージシャンとの共演はとても楽しい体験です。ショーがお客様から高い評価をいただいた時は、素晴らしい好循環が生まれます。クイーン・アンのエンターテイメントは実に多彩なため、いつも何か新しいものに出会えます。

 

クイーン・アンでの仕事を引き受ける前に、クルーズ船に乗船したことはありますか。

 

レベッカ:キュナードでは2年間働いていますが、その前にクルーズ船に乗船したことはありませんでした。だから、クイーン・エリザベスでの仕事を始めた時は、すべてがまったく新しい経験でした。船上での生活についてたくさんのことを学びました。

 

レパートリーの中で、お気に入りの音楽や曲は何ですか。

 

レベッカ:頭に浮かんだ最初の曲は、アデルの「セット・ファイア・トゥ・ザ・レイン」です。私たちが演奏する時は刺激的なラテンのタンゴ風にアレンジしますが、オリジナルの持つパワーはそのまま引き継いでいます。アデルは素晴らしいパフォーマーでありソングライターなので、彼女の曲を演奏できるというだけで幸せです。

 

もう1つのお気に入りは、ゲストミュージシャンが出演するビッグバンドのテーマナイトで演奏する、コール・ポーターの「ミス・オーティス・リグレッツ」という曲です。テンポの速いスイングのリズムですが、歌詞はある女性が殺人の裁きを受けるという内容です。ダークなテーマとアップビートなメロディとの対比が魅力の曲です。より大勢のオーケストラと演奏し、才能あふれる人たちとステージに立つのはとても楽しいです。

 

お客様との交流で気に入っていることは何ですか。

 

レベッカ:ただお客様とおしゃべりして、船上での体験談を聞き、お客様の休暇に良い影響を与えたと思えるのが大好きです。キュナードには多くのリピーターのお客様がいらっしゃいますが、おなじみの顔を見て、その方たちとよりよく知り合うことができるのは素晴らしいことです。私たちがここにいるのはお客様のおかげ。彼らなしでは仕事ができません。

 

仕事についてですが、最も楽な面、そして大変な面は何ですか。

 

レベッカ:最も大変なのは、家や身近な人たちと離れなければならないことですね。最も楽なのは、毎晩歌うこと。毎日、「あれ、これから仕事だっけ?」という感じです。これが仕事と呼べるなら、今夜も楽しんできます。

 

クルーズ船で働く一番のメリットは?

 

レベッカ:世界各地を訪問できること。これまで、訪れようとは考えもしなかった素晴らしい場所に出会ってきました。ノルウェーのクルーズは、息をのむほど感動的でした。こんな豪華な船に乗って、こんな驚きの風景の中を航海するなんて。船に乗っていなければ、あんな体験はできませんでした。

Queen Victoria in Nordfjord, Norway
Queen Victoria in Nordfjord, Norway
Queen Victoria in Nordfjord, Norway
Queen Victoria in Nordfjord, Norway

すべてが始まった場所

 

パフォーマンスを始めた頃のことを話していただけますか。

 

レベッカ:5歳の時から母は私をバレエや演劇のクラスに通わせました。16歳ころまで通いましたね。でも18歳になるまでは、それをキャリアとして真剣に考えたことはありませんでした。歯科看護師の実習生になったのですが、音楽劇への情熱は続いていました。自分の進路に満足していなかったので、挑戦してみようかと思いました。

 

そこで、ロンドン・カレッジ・オブ・ミュージックに進み、演技と歌に焦点を当てた音楽劇を学びました。2018年に卒業した後、1年間日本に住み、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに就職しました。それが初めてのプロ契約でした。

 

クイーンズ・ルームでの初めてのパフォーマンスは覚えていますか。

 

レベッカ:ええ。とても緊張しました。仕事の後、部屋に戻る途中で道に迷ったのを覚えています。環境に慣れるまでに数週間かかりました。私のバックグラウンドは舞台演劇なので、バンドとの仕事はまったく違う世界でした。お客様がどれほど期待しているかを知っていたので、バンドをがっかりさせたくないというプレッシャーを大いに感じました。それに、自分がショーの主役という側面もあります。

 

そうですね。歌うだけでなく、観客と交流する必要もありますね。

 

レベッカ:そのとおりです。私にとってまったくの初体験でした。曲を紹介するだけでも、マイクを持って話す時は自信と確信が必要です。経験を重ねるにつれて、お客様とよりよく交流できるようになります。会場内にエネルギーを注ぎ込む必要があるテーマナイトでは特にそうです。クイーン・アンのクイーンズ・ルームは、お客様により近いのが魅力です。

Gala Evening on the Queens Room on board Queen Anne
Gala Evening on the Queens Room on board Queen Anne
Gala Evening on the Queens Room on board Queen Anne
Gala Evening on the Queens Room on board Queen Anne

パフォーマーの1日

 

夜に演奏する場合の、典型的な洋上での1日を教えていただけますか。

 

レベッカ:夜遅くまで演奏するので、当然遅い朝を迎えがちです。普段は朝食を摂りません。目が覚めた時に起きて、乗組員の食堂でコーヒーを飲みます。食事の提供は午前11時30分からなので、通常ブランチが1日の最初の食事になります。

 

その後は、個人的な用事を済ませたり、ジムに行ったり、プロムナード・デッキを散歩したりします。可能な限り毎日、エクササイズをしたり新鮮な空気を楽しむようにしています。

 

仕事はたいてい午後5時から。まずはサウンドチェックとリハーサルをします。もし通しで試してみたい曲があったら、みんなで一度合わせてみます。リハーサルの後は、たいていブッフェでディナーを摂ります。その後、午後8時45分の開演に向けて準備します。

 

リハーサルはどこで行うのですか?

 

レベッカ:クイーンズ・ルームです。会場は出入り自由ですので、お客様がふらっと立ち寄ってリハーサルを聴いていたりして、とても面白いです。素敵なことなのですが、うまくいかない時もあるので、そんな時はあくまでリハーサルであると簡単にお伝えします。みんなが集まってリハーサルをする機会があるのは素晴らしいことです。

 

寄港日には日課はどのように変わりますか。いつも下船しますか。

 

レベッカ:ええ。特に、見たい場所ややりたいことがある時は、午前中半ばに下船します。1人で出かけることもありますし、グループで何かを一緒にやることもあります。美しい寄港地を見る時間があるのは本当に恵まれていると思います。そして夜は歌って…なんと素敵な1日でしょう。

 

クイーンズ・ルーム以外の場所で演奏をしたことはありますか。

 

レベッカ:ええ、リバプールでの命名式当日にザ・パビリオンでセットを演奏しました。ノルウェーのフロムからの出港パーティでも演奏しました。屋外のパノラマ・プール・クラブで、あの風景の中で演奏できたのは最高でした。

Queen Anne's aft deck from above, showing the Panorama Pool Club
Queen Anne's aft deck from above, showing the Panorama Pool Club
Queen Anne's aft deck from above, showing the Panorama Pool Club

舞台裏

 

クイーンズ・ルームのパフォーマンスは、どのように形作られるのですか。最初のステップは何ですか。

 

レベッカ:最初にこの仕事を引き受けた時、クイーンズ・ルームの全レパートリー、400曲ほどを渡されました。いわばスターターキットですね。そのすべての曲を、何日もかけて独自に学びました。曲の多くは聞き覚えのあるものですが、アレンジメントやスタイルはキュナードのクイーンズ・ルームに合わせて変えられているので。

 

それから、バンドと一緒にリハーサル?

 

レベッカ:はい。クイーン・アンでは幸運でした。造船所にいる間にリハーサルができたので。これは、お客様の前で演奏する前に、全員の演奏スタイルを知るのに役立ちました。

 

どの曲をどの順番で演奏するか、どのように決めるのですか。

 

レベッカ:バンドリーダーと綿密に相談します。彼は毎晩のセットリストの作成を担当していて、各晩のテーマに合わせてレパートリーとバンドの長所とのバランスを取り、正しい曲を選んで正しい順番に並べるのがとても上手です。

 

先ほど400曲ほどを学んだとおっしゃいましたが、歌詞を忘れたことはありませんか。

 

レベッカ:パフォーマンスの時は、セットリストと歌詞をダウンロードしたiPadを手元に置いておくので、歌詞をすべて覚える必要はありません。そんなことをしたら、頭がいっぱいになっちゃう。歌詞を忘れるのは私が最も恐れることの1つなので、対応策を用意しておけるのはいいことです。

 

ご自分の喉を守るために何か特別なことをしていますか。

 

レベッカ:一番大切なのは、短距離走ではなくマラソンのように捉えること。ベストの状態でパフォーマンスをするには、深夜まで続くショーを制限し、十分な休息を取る必要があることを学びました。私はアルコールはあまり飲みません。そして水分補給はとても重要です。毎日2リットル以上の水を飲むようにしています。

 

開演前にウォーミングアップはしますか。

 

レベッカ:特に歌うのが難しい曲がセットリストにある時は、ボーカルのウォーミングアップをするようにしています。時間があれば、部屋で数分、リップロールや音階練習を行います。発声練習用のストローもあります。多くの歌手が使う素晴らしいツールです。

 

あなたのヘアとメイクは誰がしますか。

 

レベッカ:自分でやります。最も得意な分野とは言いがたいので、いかにも素人らしいのも納得がいくでしょう。でも、異なるスタイルを試して、その夜のテーマに合うように努力するのは楽しいです。

 

ステージ衣装もご自分のですか。

 

レベッカ:ええ、すべて自前のものです。着たいものを選べるので楽です。ガラ・イブニング用のガウンでも、70年代のテーマナイト向けの衣装でも、ドレスアップするのは大好きです。

 

開演前は、まだ緊張しますか。

 

レベッカ:最近はそうでもありませんが、特定の曲を歌う時には緊張します。まだ自分のものになっていないフレーズやメロディがありますので、集中する必要があります。そのようなフレーズやメロディが近づくと、気が張り詰めます。緊張感はいいことだと思っています。真剣に取り組んでいる証拠です。

 

でも、経験を積むにつれてバランスを取ることを学んだので、アドレナリンが充満することはありません。また、間違いを犯した時にはくよくよしないことも重要です。次回はもっとうまくできるよう努力するだけです。

 

最後の質問です。将来の展望をお聞かせください。

 

レベッカ:長期的にはもっと舞台に携わり、歌と演技をミックスして、パフォーマーとして成長し続けたいです。でも、船上での生活も素敵です。私はとても恵まれていると思います。だから、将来は見てのお楽しみですね。ワールド・ボヤージへの憧れが私の中にあるのかも…

The Queens Room on board Queen Anne
The Queens Room on board Queen Anne
The Queens Room on board Queen Anne
The Queens Room on board Queen Anne

今後の展望:別の船に乗り、別のクイーンズ・ルームで演奏

 

レベッカは2024年秋にクイーン・エリザベスに乗船し、アラスカからハワイと南太平洋を経由してオーストラリアへと航海します。

 

クイーン・アンの初シーズンが終わりに近づいた今、特別な船旅をお客様にお届けするために乗組員一同が成し遂げた素晴らしい仕事について一言触れたいと思います。レベッカとバンドを含む船上のエンターテイメントチームは、その成功に欠かせない役割を果たしてきました。

 

そして私だけでなく、大勢のお客様が、レベッカのことを、クイーンズ・ルームで時間を止めることができる歌手としていつまでも覚えていることでしょう。

アーティスト写真:エステバン・オチョア

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