Queen Elizabeth sailing past Hubbard Glacier in Alaska
Grey silhouette of a person's head and shoulders

ニック ダルトン

メール・オン・サンデー紙 ジャーナリスト

窓の外は、風は強いが快晴であり、アラスカのインサイド・パッセージに位置するフィヨルドには、巨大なハバード氷河が見えます。片側には雪を頂いた山々が連なり、反対側にはごつごつした島々があります。船内では、食器の音とともに、ウェイターがキュウリのサンドイッチをサーブする音がかすかに響いています。そして、磨き上げられた木材とアールデコ装飾がほどこされた、キュナードのクイーン・エリザベスに乗っていることを実感できます。

 

ベア・グリルス氏はバンクーバー発のクルーズに乗船しました。セレブにサバイバルスキルを身につけさせるという趣向のテレビ番組『ランニング・ワイルド』での冒険を語ってくれました。以前この地を訪れたとき、本物のクマが捕えられ半分食べられたサーモンを、オバマ大統領に振る舞ったというエピソードを披露してくれました。

 

グリルス氏のほかにも、クラシック・トリオ、さまざまなピアニスト、そして50年代風ギターを弾くデュー・エヴァーグローも乗船していました。グリルス氏は、ラグジュアリーな船上でのひと時を楽しんでいるようでした。

乗客2,000人のクイーン・エリザベスに乗って、高価な美術品、繊細な調度品、白手袋をはめたウェイターがいる世界にいるのは、どこか現実離れした感覚があります。氷山の間をすり抜けながら、ゆったりとクルーズを楽しむことができます。

 

グリルス氏は、野性的な眼差しで活力旺盛だが、グループのリーダーはイギリスのクジラ専門家、レイチェル・カートライト博士でした。彼女は、冬はハワイでザトウクジラを研究し、夏はそのクジラたちを追いかけてアラスカまで訪れます。カートライト博士は、船上でクジラや氷河、クマについて興味深い話を聞かせてくれました。博士の著書、『Wildlife and Wilderness: Along Alaska's Inside Passage(ワイルドライフ&ワイルドネス:アロング・アラスカズ・インサイド・パッセージ)』は、クルーズとエコロジーが融合した必読の一冊でしょう。

また、グレイシャー・ベイ国立公園のレンジャーが、パノラマビューが広がるコモドアー・クラブに登場しました。レンジャーのマイケルは、我々の目前に広がるマージェリー氷河の手付かずの氷の崖や、海に達する巨大で濁ったグランド・パシフィック氷河について解説してくれました。マイケルは、我々が実にさまざまな場所を訪れていることをうらやましく思うと言いました。なぜならアラスカでは、小型飛行機を使わないと、船でしかアクセスできない場所が多いからです。

 

これには、シトカが含まれます。こちらでは「ラプターセンター」を訪れました。負傷したハクトウワシがリハビリを受けていました。また、「フォートレス・オブ・ザ・ベア」では母親を失った子グマたちが遊ぶ姿を眺めることができました。

 

かつてサーモンの缶詰工場があったアイシー・ストレイト・ポイントでは、ザトウクジラが尾をひるがえす様子を小さなボートから見ることができます。昼食はアラスカ産のカニの足。ゴンドラに乗って山を登り、エンパイア・ステート・ビルディングを凌ぐ高さからジップラインを楽しんだ後、沿岸を散策してラッコを観察できます。

テンダーボートに乗って、アラスカの首都ジュノーへ。ほぼ垂直にそびえるサンダーマウンテンを背景に、木造建築物やカラフルなバーが並んでいます。ゴールドラッシュの町ケチカンを出発し、小川が縦横に流れる太古の熱帯雨林の中をディアー山地へと向かいました。また、ヘインズに向かう途中、恐ろしげに山頂を見上げる我々に、おんぼろバスの運転手は、「あの山に登ったものの人数より月へ行った者のほうが多いよ」と言ったのを覚えています。

 

キュナードのクルーズでは食事も楽しみの1つです。地元のサーモンやオヒョウをふんだんに使った料理を、スーツや上品なフロックコートに身を包み、格式あるダイニングルームでいただくのは特別です。

 

大自然の中で食べる食事は格別ですが、夕日を見ながらラグジュアリーな気分を味わえるのも素晴らしかったです。

キュナードのアラスカシーズンは、2024年バンクーバー発2025年シアトル発を販売中です。ぜひオンライン予約をしましょう。

 

この記事は2024年3月の『メール・オン・サンデー』に掲載されたものです。

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