プエルト・マドリン(アルゼンチン)
このアルゼンチンのリゾート地は意外にもウェールズの男爵にちなんで名付けられました。彼は、産業革命の時代に農村社会が受けた経済的打撃のために祖国を離れた人々の1人です。
皮肉なことに、プエルト・マドリンは大規模な製造業、特にアルミニウム工場のブームによって栄え、現在は1970年代の人口の10倍以上である約7万人が住んでいます。今では、1860年代に入植したウェールズ人の遺産は、主にプエルト・マドリンの通りの名前のみとなっています。ただし、近隣の町ガイマンには、おいしいペストリーを提供する伝統的なウェールズ風ティーハウスがあるのでぜひ訪れてみましょう。
ガイマンへ向かうなら、トレレウにも立ち寄ってみましょう。町の名前は「ルー(Lew)の人々」を意味し、ウェールズの初期入植者であるルイス・ジョーンズにちなんで名付けられています。市内には彼の遺産を物語る遺品や建物がいくつかあります。しかし、街の本物のスターは何と言っても何百万年も前にこの地域に住んでいた生物でしょう。古生物博物館にはパタゴニア地方で発見された1,700以上の化石が収蔵されており、テフエルチェサウルス、パタゴサウルス、ティタノサウルスなど、この地域の恐竜の実物大の展示物や証拠品もあります。
プエルト・マドリンのロカ大通りは海岸に沿って伸びており、ビーチや海を眺めながら快適な散策をお楽しみいただけます。さまざまなショップ、カフェやレストランなど、休憩やエネルギー補給に最適なスポットが数多くあります。
しかしこれは、この地の醍醐味の一部にすぎません。やはり北パタゴニアでは、一番の見どころは大自然です。たとえば、ハンマー型のバルデス半島の自然は必見でしょう。半島はプエルト・マドリンを大西洋の外海から守るヌエボ湾を形成しており「海洋ほ乳類の保護にとって世界的に重要である」ことから、ユネスコの世界遺産に登録されています。
この海域は、絶滅が危惧されるミナミセミクジラにとって、世界で最も重要な繁殖地の1つです。この海域のシャチは、ここを営巣地とするオタリアとミナミゾウアザラシの子を捕まえるため、意図的にビーチに乗り上げるというユニークな狩猟テクニックを用いることで知られています。
ここからさらに南には、プンタ・トンボ国立自然保護区があり、150万羽近いマゼランペンギンの巨大営巣地に近づけます。伝統的な家族経営のパタゴニアの牧場へ足を延ばせば、美しい景色もご覧いただけます。